1 該当範囲に関する留意事項

(1)我が国において適法に行われる業務であれば,その活動の業種に制限はない。

(2)申請人が経営又は管理に従事する事業は,外国人若しくは外国法人が現に投資しているもののみでなく,日本人若しくは日本法人のみが投資しているものであっても, 「経営・管理」の在留資格に該当する。 

(3)経営又は管理に従事する者が,純粋な経営又は管理に当たる活動のほかに,その一環として行う現業に従事する活動は,「経営・管理」の在留資格の活動に含まれる。ただし,主たる活動が現業に従事するものと認められる場合は,「経営・管理」の在留資格に該当しない。 

(4) 「経営・管理」における事業は,営利を目的としないものであっても,また,外国又は外国の地方公共団体 (地方政府を含む。)の機関の事業として行われるものでも差し支えない。 

(5) 複数の者が事業の経営又は管理に従事している場合には,それだけの人数の者が事業の経営又は管理に従事することが必要とされる程度の事業規模,業務量,売上げ,従業員数等がなければならず,これらから見て,申請人が事業の経営又は管理に主たる活動として従事すると認められるかどうかを判断する。 

具体的には,

①事業の規模や業務量等の状況を勘案して,それぞれの外国人が事業の経営又は管理を主たる活動として行うことについて合理的な理由が認められること,

②事業の経営又は管理に係る業務について,それぞれの外国人ごとに従事することとなる業務の内容が明確になっていること,

③それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として相当の報酬の支払いを受けることとなっていること等の条件が満たされている場合には,それぞれの外国人について「経営・管理」の在留資格に該当する。 

(6)「経営・管理」の在留資格の決定に当たっては,個人事業は登記が必要とはされておらず,また,株式会社等を設立する準備を行う意思があることや株式会社等の設立がほぼ確実に見込まれることが提出書類から確認できた場合は,登記事項証明書の提出を不要としていることから(後記第2の4参照),登記事項証明書(登記簿謄本)の提出がないことのみをもって不交付(不許可)処分を行うことのないよう留意する。 

(7) 入国・在留を認める役員の人数については,それ自体に制限はなく,その者の行おうとする活動に在留資格該当性が認められない場合又は基準適合性が認められない場合,その他在留状況に問題がある場合など在留を認めるべき相当の理由がないときを除き,人数の観点から不許可・不交付とすることはできない。(略)役員報酬の有無や報酬額については,株主総会議事録や取締役会議事録などを確認する。 

2 事業所の存在・確保に関する留意事項 

(1)「経営・管理」の在留資格に係る活動については,事業が継続的に運営されることが求められる。事業所については,賃貸物件が一般的であるところ,当該物件に係る賃貸借契約においてその使用目的を事業用,店舗,事務所等事業目的であることを明らかにし,賃貸借契約者についても当該法人等の名義とし,当該法人等による使用であることを明確にすることが必要である。月単位の短期間賃貸スペース等を利用したり、容易に処分可能な屋台等の施設を利用したりする場合には,それを合理的とする特別の事情がない限り,「事業所の確保(存在)」の要件に適合しているとは認められない。 

なお,事業所は,実際に事業が営まれている所であるので,住所及び電話番号等を借り受け,電話にはオペレーターが対応し,郵便物を転送するなど実際に経営又は管理を行う場所は存在しない「バーチャル・オフィス」等と称する形態は,事業所とは認めない。

(2) 住居として賃借している物件の一部を使用して事業が運営されるような場合には,次の点を必要とする。 

①住居目的以外での使用を貸主が認めていること(事業所として借主と当該法人の間で転貸借されることにつき,貸主が同意していること) 

②借主も当該法人が事業所として使用することを認めていること 

③当該法人が事業を行う設備等を備えた事業目的占有の部屋を有していること 

④当該物件に係る公共料金等の共用費用の支払に関する取決めが明確になっていること 

⑤看板類似の社会的標識を掲げていること 

(3) インキュベーター(経営アドバイス,企業運営に必要なビジネスサービス等への橋渡しを行う団体・組織)が支援している場合で,申請人から当該事業所に係る使用承諾書等の提出があったときは,独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が運営する対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)の提供するオフィスなどのインキュベーションオフィス等の一時的な住所又は事業所であって,起業支援を目的に一時的に事業 用オフィスとして貸与されているものの確保をもって,「事業所の確保(存在)」の要件に適合しているものとして取り扱う。

3 事業の継続性に関する留意事項 

事業の継続性については,今後の事業活動が確実に行われることが見込まれなければならない。しかし,事業活動においては様々な要因で赤字決算となり得るところ,単年度の決算状況を重視するのではなく,貸借状況等も含めて総合的に判断することが必要である。 

なお,債務超過が続くような場合は,資金の借入先を確認するなどし,事業の実態,本人の活動実態に虚偽性がないか確認する。特に,2年以上連続赤字の場合,本人の活動内容を含め、慎重に調査する。 

(1) 決算状況の取扱い 

ア 直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合 

直近期において当期純利益があり,同期末において剰余金がある場合には,事業の継続性に問題はない。また,直近期において当期純損失となったとしても,剰余金が減少したのみで欠損金とまでならないものであれば,当該事業を継続する上で重大な影響を及ぼすとまでは認められないことから,この場合においても事業の継続性があると認められる。したがって,直近期末において剰余金がある場合又は剰余金も欠損金もない場合には,事業の継続性があると認められる。 

イ 直近期末において欠損金がある場合 

(ア)直近期末において債務超過となっていない場合 

事業計画,資金調達等の状況により,将来にわたって事業の継続が見込まれる可能性を考慮し,今後1年間の事業計画書及び予想収益を示した資料の提出を求めることとし,事業が行われていることに疑義があるなどの場合を除いて,原則として事業の継続性があると認める。ただし,当該資料の内容によっては,中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出をさらに求める等して審査する場合もある。 

(イ)直近期末において債務超過であるが,直近期前期末では債務超過となっていない場合 

債務超過となった場合,一般的には企業としての信用力が低下し,事業の存続が危ぶまれる状況となっていることから,事業の継続性を認め難いものであるが,債務超過が1年以上継続していない場合に限り、1年以内に具体的な改善(債務超過の状態でなくなることをいう。)の見通しがあることを前提として事業の継続性を認めることとする。具体的には,直近期末において債務超過であるが,直近期前期末では債務超過となっていない場合には,中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が,改善の見通し(1 年以内に債務超過の状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)の提出を申請者に求めることとし,当該書面を参考として事業の継続性を判断することとする。 

(ウ)直近期末及び直近期前期末ともに債務超過である場合 

債務超過となって1年以上経過しても債務超過の状態でなくならなかったときは、事業の存続について厳しい財務状況が続いていること及び1年間での十分な改善がなされていないことから,増資,他の企業による救済等の具体的な予定がある場合には,その状況も踏まえて事業の継続性を判断する。 

ウ 直近期及び直近期前期において共に売上総利益がない場合 

企業の主たる業務において売上高が売上原価を下回るということは,通常の企業活動を行っているものとは認められず,仮に営業外損益,特別損益により利益を確保し たとしても,それが本来の業務がら生じているものではない。単期に特別な事情から売上総利益がない場合があることも想定されるが,二期連続して売上総利益がないということは当該企業が主たる業務を継続的に行える能力を有しているとは認められない。したがって,この場合には事業の継続性があるとは認められない。ただし,増資, 他の企業による救済等の具体的な予定がある場合には,その状況も踏まえて事業の継続性を判断する。 

(注)主な用語の説明 

 直近期:直近の決算が確定している期(直近の決算は「損益計算書」を見る。) 

 売上総利益(損失):純売上高から売上原価を控除した金額(「損益計算書」を見る。) 

 剰余金:法定準備金を含むすべての資本剰余金及び利益剰余金(「貸借対照表」を見る。) 

 欠損金:期末未処理損失,繰越損失(「賃借対照表」を見る。) 

 債務超過:負債(債務)が資産(財産)を上回った状態(「貸借対照表」上の「負債の部」の合計が同表の「資産の部」の合計を上回った状態のこと。) 

4 在留期間「4月」の新設について 

平成24年7月に入管法が改正され,また,外国人登録法が廃止されて,現行の在留管理制度が導入される前は,我が国で株式会社等を設立し「投資・経営」の在留資格を得ようとする者は,「短期滞在(90日)」の在留資格で上陸し,その間に,外国人登録を行い,その住居地をもって会社設立の登記をし,「投資・経営」に係る手続を行っていたところ,現行の在留管理制度が導入され,中長期在留者でなければ在留カードが交付されず, 住民票も作成されないため,「短期滞在」の在留資格で在留する者は居住地を証する証明書を持つことができず,法人を設立するための準備行為を行うことが困難となった。 

これに対して,平成26年6月に閣議決定された規制改革実施計画において,株式会社等を設立する準備を行う意思があることや株式会社等の設立がほぼ確実に見込まれることが提出書類から確認できた外国人については,登記事項証明書の提出がなくとも入国を認めることについて検討し,結論を得ることとされた。 

このことを踏まえ,入管法施行規則別表第3の「経営・管理」の項の下欄第1号ロにおいて,「当該事業を法人において行う場合には,当該法人の登記事項証明書の写し(法人の登記が完了していないときは,定款その他当該法人において当該事業を開始しようとしていることを明らかにする書類の写し)」として,株式会社等を設立する場合に登記事項証明書の提出は不要としつつ,そのような場合には,法人が設立されていない不安定な状態で長期の滞在を認めることは適当ではないことから,中長期在留者となり住民票が作成される最短の月単位の期間である「4月」の在留期間を決定することとなったものである。 

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