会社を作る上で必ず必要なのがこの「定款」(ていかん)。
その作成手段によってコストが4万円変わってくるということは、ネットの情報などで知っている方も多いのではないでしょうか。
ではいったい誰がこの電子定款を作成できるのか?自分ではできないのか?雛型定款で問題はないのか?といったことを説明いたします。
なぜ電子定款だと4万円おトクなのか?
まず初めに、「定款」(ていかん)とはどういったものであるのか、簡単にご説明します。
定款とは、法人格に対する様々な決まりごとを文書化したものです。例えば、以下のような事柄を記載します。
- 会社の名前
- 会社の場所
- 会社の事業内容
- 会社の会計に関すること
- 発起人に関すること
- 資本金に関すること
- 会社の役員に関すること
法人を作る際には、こういった会社の決まり事を作り、予め文書化して、公の機関(会社の登記を行う法務局)に提出しておかなければなりません。
以前は、この定款を紙ベースで作成し、法務局へ提出することで、法務局はその定款を紙で保管していたわけですが、近年の電子化により、その提出が電磁的記録(データ)によるものでも良いとされたのです。
紙の定款には、4万円分の「印紙」を貼って提出しなければなりません。
「印紙」についての説明はここでは省きますが、簡単に言うと、大事な文書なので、その信頼を担保するために国に税金を納める(国が定める法律によってその信頼が保たれるわけなので、その信用保証料のようなもの。)という意味だと理解しています。
さて、その定款を電子化して提出しても良いと先程説明しましたが、これが「電子定款」というものです。
電子化されたものには物理的に印紙を貼ることができませんので、「電子定款で提出する場合には、印紙は貼らなくてよい決まりになっている」というのがこの4万円おトクになる理由です。
しかし、ただ単に紙ベースのものをPDFなどの電子データにすればよいかというと、そこはやはり違います。
国としても、一定のルールを設けて、その文書がやはり信頼性を担保したものであるという証明が付与された電子データでないとダメですと言っているわけです。
その、「信頼性を担保した証明」となるのが、「電子署名(電子証明書)」です。(実はマイナンバーカードにも電子証明書は入っています。)
電子定款には、必ずこの「電子署名」を付与しなければなりません。
そして、我々行政書士等は、その職権に基づく「電子証明書」というものを保持しています。(※詳しくは、認証機関にお金を払ってその証明書を発行してもらっているので、全ての行政書士が持っているとは限りません。)
行政書士は、公的書類の作成を依頼者の代わりに行い報酬を得ることを業としておりますので、このようなケースであれば、会社を設立したい人に代わって定款を作成し、そこに行政書士としての電子証明書を付与することで、依頼者が電子定款を作成したことと同義であることが、法律によって担保されるわけです。
以上のような理由から、近年は紙定款よりも電子定款を作成して印紙代4万円を節約して会社を作ることが一般的であり、その手続きとして我々のような行政書士等にその作成を依頼するというのがスタンダードな方法となっています。
自分で電子定款を作成するには?
ここまで説明をしてきて、ならば自分の電子証明書を付した電子定款を作成して、それを提出するのではダメなのかと思われた方もいらっしゃるかと思います。
結論から申し上げると、それでも可です。
参考までに、発起人ご自身で電子定款を作成するための簡単な手順を解説します。
まず必要なものですが、
- マイナンバーカード(電子証明書付きのもの)
- ICカードリーダー(マイナンバーカードとPCをつなぐもの)
- wordなどの文書作成ソフト
- PDFデータを作成するためのソフト
- PDFデータに電子署名を付与するためのソフト
- 電子定款を公証役場へ送信するためのソフト(申請用総合ソフト)
大まかに、以上のようなものが必要となります。
次に手順ですが、
- マイナンバーカードを作成する
- 定款の文書を作成する
- 文書のPDFデータに電子署名をする
- 電子署名済みの定款を公証役場へ送付して公証人の認証を受ける(※)
- 電子公証済みの定款を公証役場へ取りに行く(※)
※株式会社の場合
大まかに以上のような流れとなります。さらにそれらを正確に使用する知識も当然必要となります。
しかし現実は、たった一度の会社設立のためにこういった環境を整え、時間とお金を費やしてこれらの手続きをするということは、とても比現実的であると言えます。
雛型で作った定款に潜む「意外な落とし穴」とは?
ところで、自分で定款を作成しようと思ったとき、誰しもが参考にするであろうものが、「ネットの雛型」です。
誤解を恐れずに言えば、我々行政書士であっても、ある意味「マイ雛型」を活用して日々定款を作成しています。
但し、我々専門家は、その定款の一言一句を理解したうえで、その作成にあたっています。
定款には、会社を設立する人にとって普段聞きなれない数多くの文章が表記されていますが、会社を設立する人にとっての個々の状況はそれぞれ異なるはずです。
確かに、雛型定款でも、会社の設立自体は問題なく進むケースがほとんどです。しかし、多くの人が、その後に会社運営をしていくにつれてその原始定款(一番初めの定款)では不都合が生じ、定款変更という手続きを踏むことになります。
定款変更には、株主総会の特別決議というものが必要です。(会社法第309条・第466条)
さらに、登記事項に変更が生じる場合には、別途登録免許税および司法書士報酬を支払って、法務局へ会社の変更登記を出さなければなりません。(内容により数万円程度)
もちろん、設立当初からの事業規模拡大などに伴う定款変更というものは、一定程度やむを得ないことであり、そのコストに関しても、必要経費と考えるほかありませんが、一方で設立時の定款に「今後想定しうること」の記載違いなどがあったことによる定款変更というのは、無駄なコストと言わざるを得なく、極力避けていきたいことです。
例えば一例ですが、このようなことを考えたことはありますでしょうか?
代表者が死亡した場合、あなたの合同会社は存続されるのか?
これからお話しすることは、誰にでも当てはまることの一つです。
突然ですが、法人を設立したあとに、もし代表者のあなたが不慮の事故で亡くなった場合、当該法人が法律上どのような扱いとなるのか、みなさんはご存知でしょうか。
実はこれ、「合同会社」の場合と「株式会社」の場合で、大きくその前提が異なることの一つなんです。
個人事業主 | 合同会社 | 株式会社 | |
---|---|---|---|
事業(会社)の存続 | しない | しない(原則) | 手続きを経て存続する |
代表者の地位 | 引き継がれない | 引き継がれない | 引き継がれる(株主としての地位) |
代表者の資産 | 相続される | 相続される | 相続される |
上記の表で注目すべきは、「合同会社」における会社の存続は、原則されないという点です。
会社法には、以下のように記載がされています。
(法定退社)
第607条
社員(※)は、前条、第609条第1項、第642条第2項及び第845条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。
一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名
※社員とは合同会社の出資者(=ひとり会社の場合は社長)のことを言います。
(解散の事由)
第641条
持分会社(※)は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 総社員の同意
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第824条第1項又は第833条第2項の規定による解散を命ずる裁判
※持分会社=合同会社、合資会社、合名会社
上記の2つをまとめると、こういうことです。
「合同会社」の社員(出資者=この場合は代表者)は、死亡により退社をし(607条)、退社により社員が欠けたことにより、「合同会社」は解散をする(641条)。
これが会社法に記されている原則規定になります。
なんと、「ひとり社長が死亡したら、会社は無くなる。」ということになるのです。
しかしこれでは、お客様や取引先様、残された家族など、多方面に支障が出てしまうことも多いかと思います。そこで会社法は、次のような規定も設けています。
(相続及び合併の場合の特則)
第608条
1.持分会社は、その社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合における当該社員の相続人その他の一般承継人が当該社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる。(※以下省略)
この条文で注目すべき点は、「定款で定めることができる」の文言です。
あくまでも原則規定はあるものの、個別には様々な事情や想いがあるでしょうから、そこは定款で各会社の自由に定めてもらっていいですよと言っているわけです。
実は「合同会社」には「定款自治」という考え方があり、株式会社に比べ、比較的自由に会社の規定を設計することが可能ですが、それらは全て、定款に定めることによってこそ機能するものなのです。
株式会社の場合はどうなる?
ちなみに「株式会社」の場合はどのようになるかというと、会社の株式が相続対象となるため、代表者(社長)=単独株主(出資者)の上記と同じケースでは、まず社長が保有していた株式が相続財産として相続人(妻や子など)へ承継され、その相続人が新たな株主となり、株主総会にて新しい代表取締役を選び(決定権は相続人にある)、その結果しかるべき人物(妻なのか、子供なのか、第三者なのか)が既存の株式会社を存続していくといった流れになります。
ですので、「株式会社」としての法人格は無くなることはなく、事業が続く限り未来永劫引継がれてゆく形となるのです。
まとめ
定款は専門家に任せたほうが、安心かつコスパ良し!
設立に伴う責任をしっかりと理解し、丁寧に設立書類を作成すべし。たった一度のその手続きに、時間と労力を費やすならば、その時間は本業に充てるべし!です。
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