「社名」の決め方と注意点【会社のつくり方シリーズ①】
本記事はこんな方々におすすめです!
- 会社名がなかなか決まらない。
- 会社名を決めるにあたって、注意点や規則を知りたい。
- 同一商号の調査はしなくてもよいと聞いたが、本当だろうか?と思っている。
- 商号調査をどうやってやればよいか、知りたい。
(まえがき)会社のつくり方シリーズとは
こちらの記事は、行政書士として主にひとり会社、小規模会社設立のお手伝いを普段から数多くさせていただいている筆者が、
「会社をつくるときに、事業者が最低限知っておきたい基本的な知識を、順番にわかりやすく」
をモットーに解説していくページです。
シリーズ全7回の記事となっており、順番に読み進めることで、会社をつくる際のポイントが分かるようになっています。
どうぞ最後までご覧ください。
※他のシリーズは以下のリンクからご覧いただけます。
会社のつくり方シリーズ(全7回)
※リンクは別画面で開きます。
シリーズ1.「社名」の決め方と注意点
シリーズ2.「決算期」の決め方と注意点
シリーズ3.「会社設立日」の決め方と注意点
シリーズ4.「法人」とは何か
シリーズ5.「合同会社」のメリット・デメリット
シリーズ6.「本店所在地」の決め方と注意点
シリーズ7(最終回).「事業目的」の決め方と注意点
「会社をつくる」
みなさんはこのことを、単なる事務手続きと思ってはいませんか?
確かに表面的には書類を整え、提出をする作業に過ぎません。
しかし、会社を作るということは、あなた個人とは別の人格を創り上げる行為なのです。
貴方は、その創り上げられた法人格から給料を貰うことになります。
商売の最前線で様々な契約を交わすのも、貴方ではなく貴方の創った法人格がその主体となります。
貴方の代わりに、時には貴方と一緒に、ビジネスを円滑に進めていくためのパートナー、それが法人格です。
「個人が死ねど、法人は生きる。」
「法人が死ねど、個人は生きる。」
これからの人生を共に歩んでいくこの法人格を、まさに一人の人格として愛でていけるように、想いを込めて創ってみてはいかがでしょうか?
こんにちは。板橋のハンコ屋ひとり社長 兼 行政書士 の青木です。
今回は、会社設立の際に決める「会社名」について、説明していきます。
規則や注意点など、どのようなところに着目すればよいかを解説していきます。
これから会社を設立しようと考えている方は、是非参考にしてみてください。
社名を決めるにあたり
「会社名ですが、何がいいと思いますか?」
この質問、実はけっこう多いです。
確かに、会社名は、意外とスムーズには決まらないといったことが多いのではないでしょうか。
そんな方へアドバイスしているのは、まず最初の段階では、ある程度のざっくりとしたイメージをしてみてはいかがでしょうか? ということです。
- 株式会社〇〇なのか、〇〇株式会社なのか?(合同会社も同様)
- ひらがななのか、カタカナなのか、アルファベットなのか?
- オリジナリティを出すのか、ポピュラーなものでいくのか?
このように、命名者によって、そのイメージは様々だと思います。
しかし、大前提として、社名を決めるにあたっては、法律により定められた規則があります。
まずは、それらを確認することから始めていきましょう。
社名の規則(会社法第6条・第8条)
まずは、「会社法」という法律内に、社名(商号)に関する規則を定めた条文がありますので、以下に掲示します。
上記を要約しますと、
- 社名の前か後ろに必ず株式会社(又は合同会社)の文字をいれること
- 他人が見て勘違いするような社名を付けないこと。ex,〇〇銀行とか
- 他の会社と間違うような社名を付けないこと。ex,ソニー合同会社とか
というようなことが、書かれています。
社名の規則(商号登記規則)
その他にも、法務省所管の法務省令内、商業登記規則にて以下のような定めがあります。
【用いることができる符号】
(1)ローマ字(大文字及び小文字)
(2)アラビヤ数字(1.2.3…)
(3)「&」(アンパサンド)
「’」(アポストロフィー)
「,」(コンマ)
「-」(ハイフン)
「.」(ピリオド)
「・」(中点)※(3)の符号は,字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができる。
同一商号調査は不要?
旧商法(昔の法律)のもとでは、同市区町村内に同一の(又は類似する)商号を用いることは禁止とされていました。
しかし、現在はその規制は廃止されています。
では、商号調査はしなくてもよくなったのかと言うと、決してそうではありません。
むしろこれは、社名を決める際には必ず行うべきことであると筆者は考えます。
なぜ必ず行うべきかの理由を、以下に3つ説明いたします。
これらの理由から、「社名」を決める際には、同一商号調査をするべきなのです。
では次項より順番に解説をしていきます。
①類似商号の使用で訴えられる可能性がある
まず注意したいのがこちらです。
現実的にはレアケースかもしれませんが、不正の目的を持って誤認される商号を使用し、その相手方が利益侵害を受けた場合、その相手方から訴えられる可能性があります。
最大100万円以下の罰金が科されることもあります。
ですので、有名企業の名前や、それを類推するような社名は控えておいたほうが無難と言えるでしょう。
②ドメインが使用できないことがある
ドメインとは、
などのように、企業のホームページに必要なインターネットアドレスのことを指します。
このアドレスは世界で唯一のものであるため、英文の会社名などは特に、社名を決めたあとにそのドメインを取得しようとしたら、もうそのドメインは埋まっていて、取得ができないといったケースがよくあります。
会社名とドメインがあまりにかけ離れていると、やはりユーザーとしては不自然さを感じてしまいまうこともあります。
『商号調査≒ドメイン調査』であると考えてもよいくらい、必ず事前に確認しておきたいのがこの「ドメイン調査」です。
③ホームページが上位に表示されない可能性がある
前項②と少し共通する話しではあるのですが、例えばその会社に興味を持ったユーザーがホームページで検索をするとき、大抵はその会社名などで検索をします。
しかし、既に類似する商号で企業活動を行っている、しかも規模の大きな会社が存在すれば、おそらくはその会社が検索トップに表示されます。
2位以下も、その会社の他ページ等が表示される可能性が非常に高く、ユーザーとしてはそこで検索を諦めてしまうでしょう。
最悪の場合、ユーザーが勘違いをしてその会社へアプローチをしてしまい、他社へ迷惑を掛けてしまうようなことも起こりうるかもしれません。
このように、この『商号調査≒ドメイン調査』は現代の会社設立において大変重要であり、かつ最初にある程度、的を絞っておく必要があるため、必ずやっておくべきことでしょう。
商号調査のやり方
前項にて申し上げた通り、商号調査は会社を作るにあたって、まず最初に行うべき作業と言えます。
では、実際にどのようにして行ったらよいのでしょうか。
下記に具体的な4つの方法を記載します。
①インターネット検索で調べる
まず最初はやはりこちらです。
自分の付けたい会社名をネットで検索して類似するものがないか、確認しましよう。
「“〇〇” 板橋区」などと、キーワードと地域名を組み合わせたり、漢字、カタカナ、英語を試してみたり、色々検索してみて下さい。
特別大きな会社や、頻繁に結果に表示されるページなどがなければ、とりあえずは第一関門クリアといったところではないでしょうか。
②ドメインの空きを調べる
次に、使用したい会社名のドメインが取得可能かどうかを調べます。
調べるには、ドメイン取得代行サービスのサイトで検索をします。
有名なのはGMOインターネットが運営する「お名前.com」です。
こちらのサイトで取得したいドメイン名を入力すれば、そのドメインが取得可能か、また取得した場合の価格が表示されます。
末尾の”.com“や”.net”などの表記(トップレベルドメイン)によっても値段が変わります。
なかにはユニークなトップレベルドメインもあり、”.okinawa”など地域を連想させるものや、”.shop”などサイトの中身を連想させるものなどがあります。
コレ!と思ったものは、なかなか他社とも類似しにくいので、おすすめです。
③登記簿謄本で調べる
法務省が管轄する「登記情報提供サービス」というサイトで、日本全国の法人登記簿の閲覧が可能です。
1法人あたり334円の手数料は掛かりますが、キーワード検索や本店所在地の絞り込み検索等の機能も備わっていますので、確実に類似商号調査を行うことが可能です。
さらに、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)というものを事前に見ておくことで、将来自分も法人登記をすると、どういった情報が公(おおやけ)になるのかを体感することができます。
また、今後定款に記載することとなる「事業目的」についても豊富な実例を見ることができますので、非常に参考になります。
実際に閲覧をしてみますと、実にたくさんの法人が世に存在することを感じることができます。
また、これから法人を設立することへの心理的ハードルも一段下がるような気持ちになれますので、是非見てみることをお勧めします。
ちなみに私の会社名は、「株式会社32」という名称なのですが、なんと全国に全く同じ会社が5社(自社含む)ありました。(2021.5月現在)
けっこう珍しいと思ってつけた名前ですが、5社もあるとは驚きですね。
④商標登録を調べる
特許庁が提供している「特許情報プラットフォーム J-PlatPat」というところで、商標登録などの情報を調べることができます。
↓こちらの検索窓からも表示が可能です。
同一・類似の商品・サービスについて、他者の登録商標と似ている社名・商品名は、使用できません。
ただし、自己の正式名称(「株式会社○○」など)を普通に用いられる方法で使う場合は、商標権侵害にはなりません。
商品・サービスの品質や内容等を表示するにすぎない態様で使う場合も、商標権侵害にはなりません。(商標法26条1項各号)
商標権者が登録商標を使用していないことが明らかな場合、不使用取消審判を請求して、商標登録を取り消すという選択肢も考えられます。(商標法50条)
J-PlatPat
まとめ
いかがだったでしょうか。
たかが「社名」とはいえ、実にたくさんの視点があるとお感じになった方も多いのではないでしょうか。
会社設立までに決めること、やることはたくさんありますが、この「社名」が決まると、一気に身も心も引き締まってくるはずです。
なるべく早い段階で、この「社名」について決めておくことで、その他の部分にも方向性が見えてくることもあるでしょう。
法人設立への道しるべとして、是非参考にしていただけたらと思います。
会社のつくり方シリーズ(全7回)
※リンクは別画面で開きます。
シリーズ1.「社名」の決め方と注意点
シリーズ2.「決算期」の決め方と注意点
シリーズ3.「会社設立日」の決め方と注意点
シリーズ4.「法人」とは何か
シリーズ5.「合同会社」のメリット・デメリット
シリーズ6.「本店所在地」の決め方と注意点
シリーズ7(最終回).「事業目的」の決め方と注意点
投稿者プロフィール
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JR板橋駅すぐのハンコ印刷センター代表/行政書士の青木寛明です。
先代が営んでいたはんこ屋を引き継ぎ運営する傍らで、行政書士事務所を店舗内に併設しています。
気軽に何でも相談できる場所を目指しています。
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